「本当に学生さんなんですか？」
多少のお世辞はあるにせよ、こういうお褒めの言葉を頂くことが少なくありません。何と言っても当会の自慢は、その選りすぐった講師陣です。理想は「真田十勇士」です。しかし、１０人では足りないので、プロ講師も含めて「マイティ１００講師」が目標です。
ただ本音を申せば、愚痴になってしまいますが、生徒を一人集めるより、良い講師を一人集めて育てる方が何倍も苦労させられます。学生の質は年々落ちています。学力低下も勿論ですがそれ以上に、会話のできない学生、反応のない学生、ハングリー精神のない学生が増えています。そんな中から使える講師を探して育てるのは正直、忍耐を要します。
根拠は２つあります。１つは、講師個々に対する具体的なアドバイスは、石川自身が長年の受験指導の中で苦労しながら培ってきたものを土台にしておりますから、一朝一夕に可能なものとは思いません。
もう１つは、はっきり申して、学生の派遣は真面目にやったら手間が掛かるだけで儲からないからです。期間半年未満の週１回程度の学生講師の派遣は殆どボランティアと言っても過言ではありません。なぜ続けるのかと申せば、大手のセンターや営業優先のセンターへの意地と自身のプライドのためです。そしてそれが可能なのは、マージンに頼らなくても、カウンセリングや直接指導で私自身の収入が確保できているからです。
◆募集は求人誌インターネットでも行っておりますが、大半は紹介です。『類は友を呼ぶ』ではありませんが、良い講師はまた良い講師を紹介してくれるものです。事前にこちらの希望する講師像を伝えておくこともできますから、ハズレが少なくなり、面接に掛かる無駄な時間とコストも省けます。紹介料を払っても安上がりとなります。
面接には、お父さんお母さんが予想している以上に手間とコストを掛けています。通常は、新宿や渋谷等の喫茶店で行い、交通費として一律に2000円を支給しています。「経費の無駄遣い。その分、月謝を安く…」と思われるお父さんお母さんも少なくないとは思います。しかし、約１時間、相手の貴重な時間を拘束することになるわけですし、学生講師の場合は中学受験生のその後の検証も兼ねて行っております。実際に、色々と貴重な情報を提供してくれる学生も少なくありません。決して無駄な経費とは思っておりません。
◆面接にあたっては筆記試験は行っていません。事前審査（応募書類や電話面接、紹介者からのヒアリング）で基準に達した学生のみ面接しております。もし、例えば開成中学の過去問をやらせれば、大半の学生が８割以上（『えっ、その程度なの』 と思われる方が多くなるかと思いますが、殆どのセンターがプロ講師の採用基準ですら芝中の過去問で７割程度です。中には５割程度でＯＫの所もあります）は得点するはずですが、例えば算数で、意地悪な出題をして解法までうるさくチェックすれば、半数以上が５割以下になってしまうことは目に見えています。
“新人いじめ”以外には殆ど意味のない筆記試験を行うよりも、どういう指示を出すかの方が大切であると考えております。特に未経験者の場合、いかに優秀な学生でも中高の６年間で、頭の中はすっかり算数的思考から数学的思考に変わってしまっているものです。算数の考え方を取り戻すには、どうしても多少の時間を要します。また、国語の指導の場合も、大学受験で通用した学習法やテクニックはそのまま小学生には使えません。
◆採用予定の講師には個々の経験に応じ、教材を指示して自己研鑽を要求することもあります。そのまま一緒に近くの書店に連れて行き、教材を買い与えたり、後日、予習シリーズ等を送りつけて「暇な時でいいから、勉強しといて」と要求します。そして担当の生徒が決まると、指導の方法や授業準備について個々にレクチャーをします。学生によっては３時間を越えてしまったこともあります。
さらに、指導開始から１ヶ月間は毎週、いわゆるホウレンソウ（報告・連絡・相談）を義務付け、必要に応じてその都度、指示を出しています。また、家庭巡回の際にも、その指導の様子をプロの目でチェックし、必要があれば改めて指示を出しています。学生講師にとってはかなり厳しいセンターになるかと思いますが、御家庭の期待を裏切らないようにするためには、どうしても必要な条件になってしまいます。
◆止むに止まれずのこととは言え、面接の段階でどうしても“ブランド品”ばかりになってしまいます。ですから面接では、人物本位で、人柄と熱意、さらに個人指導への適性を重視して選考しています。
大学生の学力低下が叫ばれる現在でも、いわゆる一流所の学生には、素材的には優秀な人材が揃っています。しかし、全員がそう、というわけではありませんが、確かに、多くのお父さんお母さんが懸念されるように、驕りが強かったり、どうしても自身の経験を基準にして生徒を見てしまいますから、生徒がなぜ理解できないのか、それがなかなか理解できない、という欠点もあります。
しかし一方では、生徒の質問に迅速に答えなければいけない、という家庭教師としての最も重要な使命があります。他のセンターから当会に替わる御家庭の移動理由で最も多いのが、プロ・学生を問わず、先生が問題を解けないから、です。まして当会の場合、いろんな理由でSAPIX生の比率が非常に高くなっています。御存じのように、SAPIXのテキストは毎週、小冊子やプリントの形で手渡されます。講師が予習をするには最も対処がしにくい塾になります。さらに、教材の種類も多く量も膨大な上、解説も四谷大塚や日能研に比べると丁寧とは言い難く、全く以って家庭教師泣かせの塾になります。実際、塾歴10年以上のベテランでも、SAPIXのαクラス生と聞いただけで露骨に嫌な顔をしてくる講師が少なくありません。慣れてしまえばどうということはないのですが、現実問題として、SAPIX生にきちんとした対応ができる学生講師ということなるとどうしても、特定の国私立中学ＯＢでそれなりに成績優秀な学生、ということにならざるを得ないのが現状です。
◆東大生であることを告げただけで、「えっ、東大生ですか」 と引いてしまう御家庭も少なくありません。「できない子の気持ちを分かってもらえないのでは？」という不安を口にされるお父さんお母さんも少なくありません。中には、「東大生だけは遠慮したいんですけど…。主人やその友人達を見ていますから好きになれません」 と拒絶反応を示されるお母さんもいらっしゃいます。学力優秀であることは認めても、何となく親しみにくいといったイメージをお持ちのお父さんお母さんが少なくないようです。
が、心配は御無用です。東大生に限らず、今時の優秀な学生はお父さんお母さんが考えている以上にさばけています。自分達に対する世間の目が厳しいものであるということも、十分に承知しています。また、意見を求めても返答のない学生、世の中を見下ろしている謙虚さのかけらもない学生、東大生なのだから家庭教師の面接で不合格になるはずはないと思い込んでいる学生、気楽なアルバイトとしてしか考えていない学生等は、信用問題に関わりますから面接の段階で撥ねています。
いずれにしても、どういう学生でも、当会の講師として納得できる学生だけを派遣しています。変な先入観を抱かず、取り敢えず体験授業を受けてから判断して頂きたいと思います。
ただ、稀に“目利き違い”ということもあり得るかと思います。その際は遠慮なく講師交替をお申し付け下さい。
◆学生講師に対して、これだけ厳しい要求を突きつけられるのは、センターとしては破格の待遇があるからです。設立以来、たとえ学生講師でも実績のある講師には、他のセンターのプロ講師並みの時給を出しています。一部の講師には、成績アップを条件としたインセンティブ契約（当会と担当講師との間だけですので、指導途中で料金が上がることはありませんので御安心下さい）も取り入れています。担当生徒の成績が上がれば、担当講師も素直に嬉しいものです。講師としての自信も深まります。そこに多少なりとも昇給の喜びを味わうことができれば、指導へのモチベーションもより高まるものと考えてそうしています。
が、当然の帰結として、当会の学生の指導料金は他のセンターのそれと比較すると、かなり高い方になってしまうかと思います。こういう御時世ですから尚更、御家庭に対して大きな経済的負担を強いることになってしまうことは誠に申し訳なく思います。そして、家庭教師業界でも価格破壊が進んでいることも重々承知しております。
しかし、行き過ぎた価格破壊は質の低下をもたらすだけです。学生とて人の子です。採用にあたって買手市場を維持し、こちらが欲しいと思う講師だけをセレクトするためにも、相応の待遇は不可欠になります。教師としての良心に恥じないだけの指導の質を維持し、責任ある対応をして行くには、現在の指導料金がギリギリの線になります。この点につきましては、十分な御理解を頂けたらと思います。